歯科コラム
妊娠した女性は歯が弱くなってしまうと聞きましたが、それは本当のことですか?
2020年08月28日
中央区月島勝どきの歯医者さん、YUZ DENTAL tsukishimaです。
今回のテーマは「女性の妊娠と虫歯・歯周病の発症」です。
情報社会となった今、インターネットを使えば医療に関する知識も学べるようになりました。
歯科においても例外ではなく、その気になれば医師でなくても歯科の知識を得ることが可能でしょう。
ただ、それは便利な反面危険でもあり、なぜなら間違った情報を知識としてしまう可能性もあるからです。
例えば「妊娠した女性は歯が弱くなる」…これもまた、多くの人が間違った知識を持ってしまっています。
妊娠しても歯は弱くならない
結論から言うと、「妊娠すると歯が弱くなる」と解釈してしまうのは大きな間違いです。
確かに、女性は妊娠すると虫歯や歯周病にかかりやすく、特に歯周病発症のリスクが高まるのは事実。
しかし、それは歯が弱くなるのが理由ではなく、全く別の理由によるものです。
仮に歯の強さを数値化して10とするなら、妊娠してもその数値は10のまま変わりません。
変わるのは歯ではなく口の中や身体の環境であり、
そんな環境の変化が虫歯や歯周病が発症するリスクを高めてしまうのです。
女性ホルモンと歯周病
人間誰しも仕事をするためにはエネルギーが必要で、充分な食事を摂取するほど身体は動くものです。
細菌もそれは同じで、虫歯や歯周病の原因菌もエネルギーを摂取することで働きが活発になります。
例えば、虫歯の原因菌は糖をエネルギーとするため、甘いものを食べると虫歯が発症しやすくなりますね。
さて、女性は妊娠するとホルモンバランスに変化が起こり、女性ホルモンが過剰に分泌します。
そして、そんな女性ホルモンをエネルギーとするのが歯周病の原因菌であり、
そのため妊娠したことで女性ホルモンの分泌が過剰になると、歯周病が発症しやすくなるのです。
悪阻による口の中の環境悪化
個人差はあるものの、女性は妊娠すると悪阻(つわり)で苦しむ時期が訪れます。
そして、悪阻によって口の中の環境が悪化してしまうのです。
その理由は簡単で、悪阻が辛い時期は満足に歯磨きができなくなってしまうからですね。
嘔吐することで口の中に細菌が溜まり、さらに歯磨きによるケアも不充分になるでしょう。
そのため妊娠していない状態に比べて口の中が汚れやすく、虫歯や歯周病が発症しやすくなります。
また、悪阻によって口の中が酸性に傾くことも、虫歯にかかりやすくなる要因の一つです。
免疫力の低下
妊娠中は風邪に注意する必要があり、なぜなら妊娠すると身体の免疫力が低下するからです。
さて、「身体の免疫力が低下した状態」は言い換えると「細菌に感染しやすい状態」であり、
そのため虫歯や歯周病の原因菌にも感染しやすくなってしまいます。
最も、これは妊娠していない状態でも言えることで、妊娠した女性に限った話ではありません。
例えば疲労やストレスの蓄積で身体の免疫力が低下していれば、虫歯や歯周病が発症しやすくなるでしょう。
さらに唾液の分泌量も低下しますから、普段に比べて細菌も停滞しやすくなっているのです。
間食が多くなる
妊娠した女性は食事をしてもなぜかまたお腹が減ることが多く、
お腹の赤ちゃんが求める物を食べたくなって食の好みが変化するのは有名ですね。
ここで問題なのは、この状態になると必然的に間食の頻度が高くなるということです。
歯は食事中の脱灰と食後の再石灰化が常に繰り返され、このバランスが崩れた時に虫歯が発症しますが、
頻度の高い間食はバランスを崩す要因であり、なぜなら充分な再石灰化ができなくなるためです。
再石灰化が完了する前に次の脱灰が起こる…そうすれば虫歯になるリスクを高めてしまうでしょう。
まとめ
いかがでしたか?
最後に、女性の妊娠と虫歯・歯周病の発症についてまとめます。
1.妊娠しても歯は弱くならない:妊娠すると虫歯や歯周病が発症しやすいが、歯が弱くなったわけではない
2.女性ホルモンと歯周病:歯周病の原因菌は女性ホルモンをエネルギーにしている
3.悪阻による口の中の環境悪化:悪阻による嘔吐での細菌の蓄積、口の中が酸性に傾くなど
4.免疫力の低下:妊娠すると身体の免疫力が低下するため、虫歯や歯周病の原因菌に感染しやすくなる
5.間食が多くなる:間食の頻度が高まることで、脱灰と再石灰化のバランスが崩れて虫歯になりやすい
これら5つのことから、女性の妊娠と虫歯・歯周病が発症について分かります。
妊娠すれば女性ホルモンの分泌は過剰になり、免疫力の低下や悪阻が起こるようになります。
最も、これらはいずれも妊娠のキーワードに対して当然のことばかりかもしれません。
しかし、その当然のことが虫歯や歯周病が発症するリスクを高める要因になっているのです。
「妊娠すると歯が弱くなる」、「お腹の赤ちゃんにカルシウムを取られる」などは間違った知識であり、
ここで改めて正しい知識を身につけてその対策を考えるようにしてください。
月島 勝どき 歯医者なら『YUZ DENTAL tsukishima』